*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

今日は、沙霧がいない。





朝早くから、疾風と共に山を下り、都の市へと出かけているのだ。





玉梓の出産が近くに迫り、その準備のために必要なものを買い揃えるのだと言っていた。





泡雪は自分も同行したいと願い出たが、疾風が、山で待っているようにと告げた。





理由は分からなかったが、容姿のせいだろう、と思った。





盗人たちと暮らすようになってから、泡雪は、自分の外見が他の人間たちとは異なるのだということが、理解できるようになっていた。






年若い人間は、皆一様に、黒い髪を持っていて、瞳の色も、泡雪よりずっと濃かった。





それは、山を降りても一緒だろう。






そんな自分が沙霧たちと共に都に出れば、迷惑をかけることになるだろう、ということもよく分かっていた。






だから泡雪はそれ以上は、大人しく、雪笠を被って蓑をまとった沙霧を見送ったのだ。