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燈台の灯火が、入り口から吹き込んでくる風に、ゆらゆらと揺れている。
そのさまをぼんやりと見つめながら、泡雪は、ほとんど無意識のように、単衣の合わせ目に手を差し入れた。
いちいち目で確かめなくても、手の感覚だけで成し遂げられるほど、その動作は、数え切れないくらいに繰り返した動作だった。
泡雪の華奢な指がとらえたのは、沙霧が作ってくれた黄楊櫛である。
懐から取り出した櫛を、灯火にかざし、琥珀の目を細めて眺める。
橙色にぼんやりと光る、滑らかな手触りの、美しい櫛。
泡雪は左手で髪の束をすくいとり、櫛の歯を滑らせた。
毎日、日に何度も梳るので、細く絡まりやすい髪は、すっかり指通りが良くなっている。
沙霧のおかげだ、と泡雪は思う。
その沙霧に、この髪を触ってほしい。
あの指で、髪を梳いてほしい。
そう思う。
だから、何度もそれを口に出そうとしたが、どんな言葉にすれば伝わるのかが分からず、結局、うまく言えないままだった。



