*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

泡雪の紅い唇が薄く開き、微かに動いた。




何か言いたいんだな、と沙霧は待つ。






しばらく口を噤んでから、泡雪はゆっくりと噛みしめるように、言葉を紡ぎ出した。







「…………お前は、子どもが好きか」







意外な問いに、沙霧は軽く目を瞠る。






「え? ………子ども?」






聞き間違いかと思い、確認するように繰り返すと、泡雪は静かに首を縦に振った。





いきなり何を言い出すのかと不思議に思ったものの、沙霧はそうだなぁ、と答える。







「子どもは好きだよ。



わたしの父には御子がたくさんいてね。


わたしは小さい頃から、腹違いの弟や妹たちと遊んでいたんだ。



幼子というのは本当に無邪気で元気でね。


やはり可愛いものだよ」







泡雪はふぅん、と頷いた。