*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

川へ水汲みに向かう途中、沙霧と泡雪は並んでゆっくりと歩を進めた。







「玉梓と疾風の子が生まれるのも、じきだなぁ」






「…………ん」







楽しみだなぁ、と沙霧は嬉しそうに笑う。







「あの二人の子なら、たいそう可愛らしく、心根も良い子に違いない。



初産だから大変だろうなぁ、わたしたちも色々と手伝いをしなければね」






「ん」







泡雪は小さく頷き、水甕を抱え直した。






雪晴れの空のもと、冷たい風が冴え渡っている。




風が吹くたびに、樹々の枝にかかっていた雪がはらはらと舞い、光の粒が頭上に降ってくるようだった。






にこにこしながら雪景色を眺める沙霧の顔を、泡雪がちらりと見上げる。





視線を感じた沙霧は、「ん?」と首を傾げた。