*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

沙霧は初め、泡雪があまり悪目立ちすることのないよう、薄着や裸足をやめさせようと試みたのだが。




沙霧が用意した着物も沓も、泡雪はいつも身につけ忘れてしまうのだ。







「まぁ、いいよ。


君が必要ないのなら、無理をすることもないしね」






「………いいのか?」







泡雪が上目遣いに沙霧を見つめ返す。





沙霧は安心させるように頷いた。







「わたしが心配していたほど、君の変わったところを皆は気にしていないらしいからね。


ここの人たちは皆、本当に大らかだよ」







白縫党の盗人たちは、実際、泡雪を異端視したり遠ざけたりするということがなかった。




珍しい容姿や振る舞いに驚きはしても、だからといってよそよそしくなるようなことはない。





様々な国からそれぞれの理由を抱えて集まってきた、色々な男たちの集まりであるからこその寛容さであった。








「…………ふぅん」







泡雪は小さく呟き、椎葉の上の干し肉をひとかけら、指先でつまんだ。