*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

「沙霧」






泡雪は求める姿を見つけ、しゃがみ込む背中に声をかけた。






「あぁ、泡雪」






沙霧は顔だけで振り返り、にこりと笑う。






「少し待っていてくれ、これだけ終わらせるから」






「ん」







泡雪は沙霧の隣に座り込み、小刀で干し肉を器用に切り分けていく手元を、じっと見つめていた。







「ーーーさ、終わったよ」






切り分けた肉を椎の葉に載せ終えると、沙霧は泡雪に目を向けた。





その足が相変わらず履物をつけていないのに気づき、眉を上げる。







「あれ、藁沓(わらぐつ)はどうしたんだい」






「…………あ、忘れてた」







微かに目を丸くした泡雪を見て、沙霧はふっと笑う。