*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

「…………どうかしたのかい。


まさか、傷が痛むのか」







問われて、泡雪がこくりと頷く。






「…………ん。


痛かったけど、もう治った」






「そうか………気づかなくて悪かったね。


夜中に来たんだろう?」






「…………ん」






「可哀想になぁ………」







沙霧はまるで自分の身体が痛むかのように顔をしかめる。







「…………ずっと気になっていたんだが。


君を傷つけたのは、いったい誰だったんだい」







深刻な面持ちで訊かれて、泡雪は大きく一度、瞬きをした。







「…………分からない。


林の中を歩いていたら、突然矢が飛んできて………。


風が強かったから、音に気づくのが遅れて、避けきれなかった。



射かけてきたのは、たぶん猟師だと思うが、よく見えなかった」






「そうか………」







沙霧は小さく頷き、考え込む。






(ーーーーー猟師が間違って射たということか。



しかし、こんな冬のさなかに、雪山の奥深くで、猟をする者などいるのか?)







どこかにひっかかるものを感じたが、考えたところで答えが出るはずもない。