*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

沙霧の言うような『家族』は、泡雪にとっては縁遠いものだった。




血の繋がりのある者はもちろんいるのだが、共に暮らしたことは一度もなかった。







(ーーー側にいるのが、当たり前………)






聞いたばかりの言葉を心の中で反芻しながら、泡雪は沙霧の優しい笑顔に視線を映した。







(側にいるのが当たり前?



…………よく、分からない)








家族を持ったことのない泡雪は、いくら言葉で説明されても、本当の意味では理解できないのだ。







考え込むように顔を俯けた泡雪の小さな頭を、沙霧はそっと撫でる。







「………いいんだよ、分からなくても。



遠くの親戚よりも近くの他人、という。


わたしと君は確かに血の繋がりはないが、近くにいて、共に暮らすことができる。



………わたしが君に教えてあげるよ。


家族、というものの温もりをーーー」







「……………ん」








こくりと頷いた泡雪の髪を梳くように、沙霧は何度も何度も撫ぜた。