*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

溜め息を洩らした沙霧の肩を抱き、今度は小声で囁きかける。







「………ところで、沙霧」






「ん?」






「あの泡雪という娘は―――――お前の妻か?」






「……………えっ!?」







沙霧は張り裂けんばかりに目を瞠った。





疾風の問いの意図に気づくと、ぶるぶると何度も首を横に振る。








「いっ、いや、違うんだ!



泡雪とはたまたま知り合いになって、というか、行き倒れていたところを助けられて。


それで、いつか礼をせねばと思っていたら、たまたま怪我をしているのを見つけて。


ずいぶん良くはなったが、一人にしておくのも不安だから、ここで一緒に暮らせれば安心だと思って………」







顔を赤らめてしどろもどろに言う沙霧を見て、疾風はにんまりと笑う。







「なるほど。


それじゃあ、泡雪と同じ洞窟に住むわけではないんだな?」







「そっ、そんな、そんなわけないだろう!


嫁入り前の娘と二人で暮らすなど、許されるものか!」







「あははは、分かった分かった。


じゃあ、泡雪のための洞窟を用意しないとな。


確か、お前の住んでいる洞窟の近くに、空いているところがあったな。


小さいから住みにくいかもしれないが、そこでいいかな」







「………あぁ、ありがとう、疾風」







沙霧は、火照った頬に手を当て、ぺちぺちと叩きながら泡雪のものへ戻った。