苦い思いを呑み込むように瞼を閉じ、沙霧は頭を振る。






(感傷に浸っていても仕方がない。


今は、目の前のーーー泡雪のことだけ考えよう。



泡雪をなんとしてでも救うのだ)






沙霧が泡雪の背に触れると、掌に冷たく感じられた。





(可哀想に、血をたくさん流して、身体が冷えているのか)






初めて泡雪に出会ったとき、雪山の夜の寒さに震えていた沙霧を、体温の高い泡雪の身体が温めてくれたのを思い出す。





沙霧は泡雪の傍らに身を横たえ、自分の上にも藁を被った。




傷ついた泡雪の身体に触れないように注意を払いながらも、自らの温もりが伝わるように身を寄せる。




硬く閉じられた泡雪の双眸、それを縁取る真っ白な睫毛が微かに震えるのを、じっと見つめながら沙霧は目を細めた。