*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

ほっそりと華奢な身体を柔らかく抱きとめ、沙霧は矢に手をかける。





何度か呼吸を整え、大きく息を吸い込んでから、抱きしめる腕に力を込めて。






「ーーーーーっ!!」






一息で矢を引き抜いた。




泡雪は一瞬、琥珀の瞳を大きく見開いた。




そして、小さな頭をことりと沙霧の肩にもたれさせる。






「………よし、よく耐えたな、泡雪。


もう一本ーーーもう少しだけ頑張れ」






沙霧は泡雪の頭をぽん、ぽんと撫でた。







残り一本の矢も抜き、教えられた通りに酒で傷口を洗う。




都を出てきた時に身に着けていた上質な絹の衣を引き裂き、その布で傷口の汚れを拭き取った。





白灰と猪脂を混ぜ合わせ、磨り潰した薬草を加えたものを塗りこみ、新しい清潔な布で結わえる。






手当てを終えると、沙霧はほぅ、と息をついて、泡雪を寝床に横たえた。