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泡雪を寝かせている洞窟に戻ると、沙霧はすぐに手当ての準備を始めた。
必要なものは、疾風や玉梓、他の盗人たちに頼んで手に入れてきた。
皆、なぜそんなものを欲しがるのかと訝しんだが、「自分は世間知らずだし、見ると聞くとは大違いと言うから、話に聞いていたものをぜひ見てみたいのだ」と言って説き伏せた。
沙霧は大きく深呼吸をし、泡雪の傍らに腰を下ろす。
まずは、矢を抜かねばならない。
ばくばくと胸が早鐘を打つのを感じながら、沙霧は矢に手をかけた。
矢に触れた瞬間、泡雪の小さな身体がびくりと震える。
沙霧は顔を歪めて泡雪の顔を見つめた。
「………痛いのか、泡雪。
可哀想に………少しだけ、少しだけ我慢してくれ。
わたしが必ず君を助けるよ」
励ますように語りかけながら、沙霧は泡雪の身体を抱き上げた。
雪と血に濡れてじっとりとした毛並みを、何度も何度も、優しく撫でる。
小さな頭に頬を寄せ、安心させるように。



