*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

沙霧の必死の形相を見て、白髭は思わずさらに言葉を続けた。






「傷口から青っぽい黄の汁が出たり、黒みがかった血が出るようだと、かなり危ないからな。


もしもそういう怪我をしたなら、すぐに俺のところに来いよ」






「はい………青黄の汁、黒い血………」






「あと、傷の手当てが終わったら、とにかく暖かくしてやることだ。


綿入りの着物で全身を包んで、気が逃げないようにせんといかん」






「はい、暖かくしてやるんですね」






沙霧はこくこくと頷く。




あまりにも真剣なので、気圧された白髭は薬草類を入れている木箱を取り出した。






「そんなに怪我が心配なら、薬草を少し分けておいてやろう。


いつ傷を負っても心配ないようにな」







すると沙霧は、ひどい日照り続きのあとに恵みの雨でも降ったかのように、満面に喜色を浮かべた。






「あ、ありがとうございます!!」






上擦った声で礼を言ってから、沙霧は地に両手をついて深く頭を下げ、慌てた様子で立ち去って行った。