*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

「傷よりも心の臓に近いところを、布できつく縛る。


それでだいたい血は止まる。



あとは洗った傷口を塞ぐんだが、薬草か、白灰を使う」






「はい」





「俺はいつも、蓬の葉を揉んで磨り潰したものか、桑の葉を使う。


それに牡蠣の殻を混ぜるのもいい。


これだと治りが早くて、痛みもおさまりやすいんだ」






「蓬か桑の葉、牡蠣の殻………」






沙霧は胸に刻みつけるように反芻した。






「そういったものが手に入らないときは、どうすれば?」





「薬草類がないときは、白灰に猪脂を混ぜたものを使うこともある。


とにかく、傷が乾かないように、外気に触れないようにするのが大事だからな。



薬草でも白灰でもいいが、傷口を覆うように分厚く塗って、上から布で包帯をするんだよ」






「なるほど………白灰に薬草を混ぜるのもいいですか」





「あぁ、いいだろうな」