*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

話を聞いた白髭は、「ほぅ、矢傷か」と頷いた。





「矢傷はちと面倒だよ。


刀傷に比べて深いからな。



しかも、鏃(やじり)が体内に残ると危ないんだ。


治りが遅いし、命に関わる」






「では、矢を抜くときが大変ですね」





「あぁ。


もし時間が経っていて、矢が刺さったまま傷が塞がりかけていたら、火で焼いた刃で傷口を広げてから抜かんといかん」







想像して、あまりの痛みに沙霧の顔は色を失った。





それを見てとり、白髭はふっと笑いながら続ける。






「矢を抜いたら、傷を洗う。


真水か酒がいい。


塵芥が残らないように、丁寧に洗う」






「い、痛そうですね………」






「矢が刺さった痛みに比べれば、なんてことないさ」






「…………」






沙霧の頬がさらに蒼白になった。