洞窟を出た沙霧は、盗人たちが踏み固めて轍のようになった道へ出て、村の中央へ向かう。
その途中で、黒駒(くろこま)と呼ばれている壮年の男に会った。
生きるために少年の頃から何十年と盗みをしているという、百戦錬磨の盗人である。
彼ならば良い治療法を知っているだろうと思い、沙霧はすぐに声をかけた。
「黒駒! 良いところで会った」
「おう、沙霧じゃないか。
血相変えてどうしたんだ」
「いや、別に何もないんだが………寒くて顔色が悪いのだろうか」
「ふぅん?」
黒駒は眉を上げたが、追及してくるようなことはなかった。
「………つかぬことを訊くが。
もし、万が一だが、矢傷を受けてしまったような場合、どんな手当てをすればいいのだろう」
「はぁ? 矢傷だと?」
黒駒は目を丸くして沙霧の頭の先から足の先まで視線を走らせたが、どこにも怪我はないらしいことを見て取ると、怪訝そうに訊ねてきた。
「………一体、なんだってそんなことを知りたいんだ?」
「いやぁ、もしかしたらそういう目に遭うこともあるかも知れない、と思って。
参考までに訊いておきたいんだ」
「ほぅ、勉強熱心なこって」
「少年老いやすく、学成りがたし、と言うからな。
何事も若いうちに教わっておいたほうがいいじゃないか」
「はぁ………?」
黒駒は訳が分からないといった表情で首を傾げたが、すぐに教えてくれた。
その途中で、黒駒(くろこま)と呼ばれている壮年の男に会った。
生きるために少年の頃から何十年と盗みをしているという、百戦錬磨の盗人である。
彼ならば良い治療法を知っているだろうと思い、沙霧はすぐに声をかけた。
「黒駒! 良いところで会った」
「おう、沙霧じゃないか。
血相変えてどうしたんだ」
「いや、別に何もないんだが………寒くて顔色が悪いのだろうか」
「ふぅん?」
黒駒は眉を上げたが、追及してくるようなことはなかった。
「………つかぬことを訊くが。
もし、万が一だが、矢傷を受けてしまったような場合、どんな手当てをすればいいのだろう」
「はぁ? 矢傷だと?」
黒駒は目を丸くして沙霧の頭の先から足の先まで視線を走らせたが、どこにも怪我はないらしいことを見て取ると、怪訝そうに訊ねてきた。
「………一体、なんだってそんなことを知りたいんだ?」
「いやぁ、もしかしたらそういう目に遭うこともあるかも知れない、と思って。
参考までに訊いておきたいんだ」
「ほぅ、勉強熱心なこって」
「少年老いやすく、学成りがたし、と言うからな。
何事も若いうちに教わっておいたほうがいいじゃないか」
「はぁ………?」
黒駒は訳が分からないといった表情で首を傾げたが、すぐに教えてくれた。



