「ーーーあぁ、見えてきた。
あの辺りだよ、わたしが住んでいるのは」
前方に見えてきた白縫党の住処を指差し、沙霧が言う。
泡雪は何も言わずに、飛ぶ速度を緩めた。
そのまま、ゆっくりと宙を下っていく。
沙霧の痛めた足に負担がかからないように、ひっそりと着地すると、泡雪は口を開いた。
「………気をつけろ。
もう雪壺にはまったりしないよう」
それだけを簡潔に言うと、泡雪は一人、再び宙に浮かび上がる。
沙霧は目を見開いて、大きく手を伸ばして泡雪の腕を掴んだ。
「ま、待て、泡雪!」
「…………まだ何か用か」
「いや………連れてきてくれて、ありがとう」
「……………ふん」
鼻を鳴らした泡雪は、沙霧の手を離そうとする。
しかし沙霧はぐっと力を込めて、させまいとした。
泡雪は怪訝そうに眉を寄せると、低く告げる。
「…………離せ」



