*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

「………っ、わぁあっ!!


と、飛んでる、飛んでる!!」






沙霧は思わず子供のような声を上げた。





泡雪は眉をひそめ、「うるさい、騒ぐな」と呟く。







沙霧は口を噤んだが、興奮で目をきらめかせながら、遥か下を見下ろした。





「………お前の足跡を辿っていけば、お前の住処に着くのか」





低い声で訊ねられ、沙霧はこくりと頷く。





「あぁ、そうだよ。


泡雪、連れて行ってくれるのか」





「…………あんな所に放っておくわけにもいかないだろう」






顔色も変えずに言った泡雪の言葉に、沙霧は微笑む。






「泡雪は優しいなぁ」




「……………」






泡雪は答えなかったが、ちらりと顔を窺うと、眉根を寄せて唇を少しだけ尖らせているのが分かった。






「照れているのか、泡雪」




「…………うるさい。黙れ」





冷たい言い方だったが、照れ隠しなのだということが沙霧には分かった。






(………なんだか、泡雪のことが分かるようになってきたなぁ。



泡雪は口数こそ少ないが、少し不器用なだけなんだな。



可愛らしい娘だなぁ)