*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

(泡雪、という名を考えたとき、この娘は何も言わなかった。


自分がどう呼ばれるのかなど、気にもとめていないのかと思ったが………。


もしかして、嬉しく思っていてくれたのだろうか)






そう考えると、沙霧はにわかに心が浮き立つように感じた。







「………そうだな。


わたしから君への初めての贈り物は、君の名前だ。


君にぴったりの、泡雪という名だ」






沙霧は手袋を外すと、泡雪の手をとった。




驚くほど冷たく、しかし滑らかな肌の手触りを確かめるように、真っ白な手の甲を撫でる。







「君の名だよ。


大事にしてくれたら、わたしはとても嬉しい」




 

「……………」






泡雪は何も答えなかったが、小さく頷いたように、沙霧には思えた。