*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

「………まあ、君がそんなに嫌なら、無理に頼むつもりもないよ。


仕方がない、痛みがおさまるまで待つことにするか………一日もすれば、歩けるくらいにはなるだろう」






沙霧は自分の足首に手を当てながら言う。




それほどひどく挫いたわけではなさそうなので、うまくすれば半日で動かせるのではないか、と楽観的に考えていた。






(………足が治る前に凍死することがないようにだけ、祈ろう)






そう思って、肩から被っていた蓑を掻き寄せた。





泡雪はそれらの動作を黙って見ている。




相変わらず、裸足に単衣一枚の、見ているほうが寒くなるような格好だった。






「………泡雪、助けてくれてありがとう。


一度ならず二度までも、本当に感謝してもしきれない。



でも、どうやってお礼をしたらいいだろうか。


恥ずかしいことにわたしは、君にあげられるようなものを何ひとつ持っていないんだよ」






すると泡雪が、ふん、と唸った。