*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

「泡雪。


すまないが、助けを呼んできてくれないだろうか」






「………助け?」





「あぁ。


わたしは一人では歩けそうにもないから」





「……………」






何も答えない泡雪の目を見つめながら、沙霧は自分の来た方向を指差した。






「あちらの方へずっと行くと、人が集まって住んでいるところがあるんだ。


そこの誰でもいい、『沙霧が川で動けなくなっている』と伝えてくれないか」





「……………」






泡雪はやはり黙ったままだった。





まさか、協力してくれないのではないか、と沙霧は危ぶむ。





しばらくの間、微動だにせずに黙っていた泡雪が、唐突に口を開いた。






「………私は、人間が嫌いだ」






「……………へ?」






沙霧は思わず、間抜けな声を出してしまった。