*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

泡雪は琥珀の瞳を細めて、沙霧をじっと見下ろしている。






「どこを痛めた」





「え………いや、足首を、ちょっとな」





「ふん」






さして関心もなさそうに、泡雪は微かに鼻を鳴らした。





そして、ほっそりとした白い手を沙霧の足のあたりに向ける。






真っ白な髪がふわりと風を孕み、じわりと赤みを帯びてきた。





惚けたようにそれを眺めていた沙霧は、はっとして身を起こす。






「…………だめだ!!」






叫んで、咄嗟に泡雪の足を掴んだ。





泡雪は驚いたように眉を上げて、足下を見下ろす。






「……………」





「やめてくれ、泡雪」





「……………」





「わたしの傷を癒そうとしているのだろう?


そうしたら、この前のように疲れ果てて動けなくなってしまうんじゃないか?」





「……………」






泡雪の身体から力が抜け、髪の色も元通りになったのを見ると、沙霧はほっと息をついた。