*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

沙霧は白狐に近づこうと身動ぎをする。




その拍子に思わず足首を動かしてしまい、「うっ」と唸った。





狐の耳が再び、ぴくりと反応する。




しなやかな前脚が、ゆっくりと近づいてきた。






「ーーー怪我をしたのか」






澄んだ声が、沙霧の耳に滑りこんでくる。




沙霧は目を丸くして狐を見た。







「お前は、雪穴にはまって怪我をするのが好きなのか」






その言葉は、紛れもなく、狐の口から発せられていた。






低く柔らかく、透き通ったその声は。







「ーーーーー泡雪!!」






沙霧が満面の笑みを咲かせると、白狐はふっと小さく息を吐いた。





そして、ぶるる、と身体を震わせると、次の瞬間には、そこに純白の少女が立っていた。