向かうのは、正面に見えるうちの門ではなく、裏に立つ、おじいちゃんとおばあちゃんの家の門。

そっちの方が駅に近い。

そして、その隣にはカナの家。



でも、今日の行き先は、カナの家ではない。



大きな和風の門を開けて、外に出ると、不思議な開放感でいっぱいになった。



この門を出て、カナの家に行くことはあるけど、それ以外の場所には、思えば、行ったことがないかも知れない。

お出かけは、いつも車で、子どもの頃から、外遊びはお庭だけだった。

近所の公園がどこにあるかすら、わたしは知らない。



中等部の時、子どもたちだけで班を作って、電車に乗って行く社会見学があった。

楽しみにしていたその日は、熱を出してお休み。



一度だけ乗った新幹線は、修学旅行の時。

家のすぐ側を電車が通っているのに、車で送ってもらった。

その時は、何の疑問も感じなかった。



でも、考えてみたら、世間知らずだよね。





「今時、天然記念物みたい」





梨乃ちゃんや亜矢ちゃんに言われた言葉が、脳裏に浮かぶ。



意地悪で言われたんじゃない。

ちゃんと分かってる。

だけど、なんだか、自分が恥ずかしくなっちゃったんだ。



小学生や中学生なら、まだしも、もう高校生だよ。



だから、わたしは、ひとりで電車に乗りに行くことに決めたんだ。