「そろそろ、帰ろうか?」
カナがそう言った瞬間、なぜかホッとした。
ああ、わたし、疲れてたんだ。
「……なんで分かるの?」
疲れたなって思ったの、なんで、分かるの?
目的語なしで聞いたのに、カナは笑って言う。
「そりゃ、ハルのことが好きだから」
午後の混雑は、朝来たときより、すごくて、
カナは、つないだ手をほどいて、
「腕、組もう」
って、肘をとんと、わたしにぶつけた。
その瞬間にも、人は右に左にとすり抜けていく。
慌てて、カナの腕にしがみつくと、カナは、ゆっくりと歩き出した。
帰りも、カナが特急電車の切符を買ってくれて、
夕焼けには、まだ少し早い明るい日差しの中、
わたしたちは、並んで、電車に揺られた。
楽しかったなぁ。
「カナ。ありがとう」
「楽しかったな。また、行こうな」
カナの笑顔が嬉しくて、わたしも思わず、顔がほころぶ。
ガタンゴトン
ガタンゴトン
本当に、楽しかったなぁ。
そんなことをぼんやりと考えている内に、
気がついたら、カナの肩に頭をもたせかけて、眠っていた。