「おじいちゃん? 陽菜です。ごめんね、心配かけて」

「いいよいいよ。無事ならそれでいい」



電話の向こうから、おじいちゃんのホッとしたような声が聞こえてきた。

優しく言ってもらうと、なおさら、申し訳なくなる。



「具合、悪くないか? カナくんから見つけたって連絡があった時は、調子が悪そうだって言っていたけど」

「大丈夫よ。乗り物酔いしたみたいで、途中で降りただけだから。もう平気」

「そうか。無理しちゃダメだぞ。車、回そうか?」

「え? まだ用事済んでいないから、また電車に乗るもの」



おじいちゃんは、わたしの言葉を聞いて、一瞬、黙り込んだ。

それから、



「そうか。……じゃあ、カナくんに代わってくれるかな?」



と言った。



何か言われる気がしたのに、と思いながら、カナに電話を手渡す。



おじいちゃんは、基本的にわたしに甘い。

もしかしたら、叱られたことなんて、ないかも知れない。



「じいちゃん? 割と元気だったろ? 安心した?」



カナは努めて明るく話している。

おじいちゃんに心配をかけないようにと、意識してくれているのが分かり、申し訳なくなってしまう。

実際、もう大丈夫。

だけど、親切なあの男の人がいなかったら、きっと、電車から降りた時、倒れていた。



「ああ、大丈夫。

ハルが、そんなに電車に乗りたいなら、オレがちゃんと連れて行くから。

どうしてもの時は車頼むよ。タクシーでも別に良いしさ。

分かってる。大丈夫、それくらいならあるし、カードも持ってるし」



どうやら、カナはわたしを電車に乗せて、目的地までちゃんと連れて行ってくれるつもりらしい。



「ありがと。じゃあ、何か使ったら、後で請求する」



ほどなくして、電話を切ると、カナはにっこり笑って、わたしを見た。