「なんで一人で行っちゃうんだよ」



ブツクサ言いながら、それでも安心したように、カナはわたしの隣に腰かけた。



「出かけたいなら、オレに言えば良いだろ?」



恨みがましいカナの声。



でも、どうして知ってるの?



言葉にしていないのに、顔に出ていたのか、カナは続けた。



「ハルんち、大騒ぎだったぞ」

「え?」

「オレ、こんなことになってるって思わないから、ハルんち行ったんだよな」



幼なじみだし、隣の家だし、カナは連絡なしで、よく家に遊びに来る。



「そしたら、ハル、いないって言うじゃん?」

「……うん」



先を聞くのが怖くなってきた。



「沙代さん、運転手さんが家にいるって知って、青くなってたぞ」



また、心配をかけてしまった。

って思うけど、でも、少しくらい信用してくれてもいいのに。



「おばさんに電話したら、オレと出かけるように言ったって言うし、だけどオレ、なにも聞いてないし。

行き先が決まってるなら、とにかく追いかけなきゃって思って、飛んできたよ」

「なんで?」

「なんでって……まあ、オレだって過保護だとは思うけどな」



カナは、なだめるように、わたしの頭をなでた。



「だけど現に具合悪くして、途中下車してるだろ? だから心配するんだよ、みんな」



返す言葉がなくて黙っていると、カナは、



「何にしても無事で良かった」



って、もう一度、わたしの頭を抱き寄せた。