*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫

男たちの言葉はもちろん、本気ではない。



一生働かずに楽に暮らせるほどの大金が手に入るかもしれない、という夢のようは話をねたに、酒飲みを楽しんでいるだけである。




そもそも、弓や刀などの武器を何一つ持っていない一般庶民が、盗賊を殺せるわけなどないのだ。




そんなことは本人たちも重々承知で、おしろおかしく冗談に花を咲かせているだけなのである。






…………しかし、そんな冗談を真に受けて、顔面蒼白になっている者が、一人だけいた。






(ーーーーーたいへん!!)






『そそっかしい』という言葉の代名詞、汀である。






(んまぁ、たいへんだわ!!



蘇芳丸が………蘇芳丸が、殺されちゃうわーーー!!!)







汀は衣被の下で震える口許に手を当て、真っ青になっていた。






(こうしちゃいられないわ!!



早くなんとかしなきゃ!!)







そうして汀は、檀弓たちと買い物にきていたことなどきれいさっぱり忘れて、人混みの中を駆け出した。