*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫

干菓子をたっぷり食べて満足した汀は、唐突に席を立った。





「私、ちょっと厠(かわや)に行ってくるわね」





「あ、うん。行ってらっしゃい」






檀弓は頷いて手を上げた。







「あー、すっきりしたぁ」






鼻歌を歌いながら厠を出た汀は、出入り口のところで話し込んでいた女たちの会話を小耳に挟んだ。






「ねぇ、知ってるかい? 賞金首の話!」




「え、なんだいそりゃ」




「この前さ、内裏に盗賊が入ったって、大騒ぎになっただろ?」






内裏に盗賊、とはもちろん、白縫党のことである。




汀は思わず足を止めた。






「その盗賊ってのが、赤毛の男と青目の女だったんだってさ」




「へぇ、そりゃまぁけったいな」




「んで、帝の勅言が出たんだよ。そいつらを捕らえた者には多額の賞金を出すって」





「へぇ〜〜」




「うちの旦那なんか、腕もないくせにさ、絶対俺が捕らえてやるーなんて意気込んじゃって、おかしいったらありゃしない」





「あんたんちは貧乏だからねぇ」




「そっちだって似たり寄ったりだろ」




「そりゃそうだ!」





明るく笑い合う女たちの間に、汀はずずいと入り込んだ。