*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫

一瞬、動きが止まる。





そして。






「〜〜〜〜〜っ!!」






汀の唇に塗られていた椿油が自分の唇に移った理由に思い当たって、灯は右手でばっと口を塞いだ。




そのまま、何も言えずに汀を見つめ返す。






汀はにっこりと笑って口を開いた。






「それはね。


私があなたに息を吹き込むために、口づ」






「わぁぁっ、言うなっ!!」






灯は叫んで、左手で汀の口を塞いだ。






「むぐぐ?」






目を丸くして首を傾げている汀を、灯は精一杯の強い視線で睨みつけた。




そして、低い声で囁く。






「………恥を知れ、お前は」






口を塞ぎながら黙って見つめあっている二人を、息吹は呆れたように眺めていた。