*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫

「火影童子。


お前、灯という名なんだな」






「…………?


あぁ、そうだが………。


なぜ知っている?」






「そこの変てこな女がそう呼んでいた」







息吹の答えに、灯が眉を上げた。




ちらりと見ると、汀は泉のほうへと目を奪われていて、こちらの会話は聞いていないようだった。







「………こいつが、俺を灯と呼んだのか。



蘇芳丸、じゃなくて………」






「あぁ、呼んでいたよ。


お前が間抜けに気を失っている間に、な」






「…………ふぅん」






灯は表情を変えずに、小さく唸っただけだった。




しかし内心では、にやついてしまいそうなのを必死に抑えていた。






(…………なんだ。


ちゃんと俺の名前を分かっているんだな。



とうとう、折れたか………)






思わず歪んでしまいそうな口許に、灯は手を当てて隠すようにした。