*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫

小さく歌うように、青瑞の姫が呟いた。







「…………あ」







汀が小さく声を上げる。




花吹雪の中に立つその姿が、風に綻ぶように、陽射しに溶けるように、少しずつ薄くなっていくのに気がついたのだ。







「消えていくわーーー」







灯はゆっくりと汀の隣に立った。







「………怨みと未練が消えて、成仏するんだろう」






「そう、よかった………」








優しい花風が青瑞の姫の身体を包み込む。





徐々に薄らいでいく姿を見守りながら、穏やかな時間が流れた。








「…………あ、そういえば」






黙って立っていた息吹が、ふと思い出したように灯に声をかける。