「ねぇ、あなた」





汀は目を細め、ゆったりと微笑む。




癖のない黒髪が、さらさらと風に靡いた。






「早く、生まれ変わってしまいなさいな。



来世できっと、あなたのことを心から愛してくれる人が待ってるわ。



あなたがここでのんびりしている間、ずっと待っていたはずよ。


きっと、もうすっかり待ちくたびれているわよ。



…………早く会いに行ってあげなきゃ」






青瑞の姫は目を閉じる。





泉の周りの空気がすぅっと透き通り、風が澄み、樹々の緑が鮮やかに輝きだした。






『………………』







時が止まったような沈黙が、穏やかに流れる。






風に揺られる衣擦れの音。