汀はふぅ、と息を洩らし、目を閉じた。




そして、ゆっくりと瞼を上げる。






「青瑞の姫さま。


あなたは、間違っています」






『……………は?』







青瑞の姫は、訳が分からないといった表情だ。





「あなたのしていることは間違っているし、見ているこちらが、なんだか悲しくなります」





『…………悲しく、なる?


どういうことだ?』





問い返してくる青瑞の姫は、心から汀の言葉が理解できないようだった。





愛した人から裏切られ、それだもただ一人、こんな山奥の静かで寂しい泉で、何年も、もしかしたら何十年、何百年も待ち続けていた美しい女性。





その心を思うと、汀は言いようもなく胸が締めつけられるような気がした。





たとえ、その純粋な愛が行き過ぎて、許しがたい過ちを犯してしまっていたとしても。