「ーーーーー青瑞の姫さま」





青白い顔をさらに蒼白にして水面に立っている青瑞の姫に、汀は対峙する。





『なんだ、女。


御託はいいから、私の愛しい男をこちらへ渡せ』





「それはできません」





汀はきっぱりと言い切った。




青瑞の姫のこめかみに、静かに青筋が立つのが見えた。





「何度も言いますけど、蘇芳丸はーーー灯は、あなたのものじゃありません」





澄んだ強い目線が、青瑞の姫を真っ直ぐに射る。





『…………そんなことは、どうでもいい。


その男は今から私のものだ』





「だめです、そんなの」





『……………』






青瑞の姫が不機嫌そうに唇を噛む。






『…………どうしても渡さぬと言うなら、お前もろとも泉に引き込むだけだ。


お前、この泉の奥底に沈んで物言わぬ骸となった女たちのようになりたいと言うのか?』





「いやです」





『……………』






堂々巡りの言い合いは、結論が出そうにもなかった。