*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫

泳いでいるのか溺れているのかよく分からない様相を呈しながらも、汀はなんとかばしゃばしゃと手足をばたつかせ、灯のもとまで辿り着いた。






「……………ごぼっ。


蘇芳丸………っ、だ、大丈夫!?」






しかし、灯はすでに頭の先まで水の中に浸かってしまっていた。






「………ごぼっ、す、蘇芳丸っ!!」






「………………」







汀が灯の腕をぎゅっと掴む。




しかし、灯は緩慢な動作で顔を仰向けただけだった。




その口は開いていて、瞼は力なく閉じられている。






(ーーーーー水を飲んでしまったんだわ………!)






汀は自分の血の気が一気に引いて行くのを感じた。







(…………急がなきゃ!!)






汀は大きく息を吸い込むと、ざばりと水の中に潜った。