*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫

「汀! 手綱を引け!!」





風を切り裂くような声が後ろから耳に届き、汀はぴくりと反応した。





「え? この紐のこと?」





汀は半身振り返って灯を見たあと、右手を伸ばして手綱をとろうとした。





その拍子に、体勢を崩してよろめき、馬の背からずり落ちそうになる。






「ーーーわっ、阿呆!!



なぜそんなに不器用なんだ!!」






灯は慌てて声をあげた。





左手で栗野のたてがみをつかんで、なんとか落ちずにいる汀に向かって、いつにない大声で指示を飛ばす。






「もういいっ!!


俺が追いつくまで、そのまましがみついてろ!!」






「はーい!!」






汀はなんとか体勢を立て直して再び座ると、ぎゅっと栗野の首に腕を回した。