*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫

青瑞の姫は、灯をきつく抱いていた腕を少し緩める。





そして、ざわめく髪で汀の全身を包んだ。






『…………お前は、邪魔だ。


そろそろ消えろ』






無慈悲な声で低く告げると、汀の身体を高く宙に持ち上げる。





そのまま水面に叩きつけようとしているのを察知し、灯は即座に動いた。




手に持った刀で自分を捕らえている髪を断ち切り、青瑞の姫の身体を踏み台にして高く跳び上がる。




空中でばたばたしている汀を抱きとめると、間髪いれずに汀の身体に巻きついていた髪をばさりと断ち切る。





そして、ちらりと泉の淵に目を向け、まだ気を失ったまま倒れ伏している息吹の位置を確認すると。




そこに向かって、思い切り汀の身体を放り投げた。






「きゃぁぁぁ〜〜〜〜っ!!」





「ぐえっ!!」






汀の叫びと息吹の呻きが重なる。





汀はめでたく、息吹の身体を下敷きにして無事に落ちた。