*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫

『本当に、待った甲斐があったよ。



たくさんの不恰好な男や、恋人といちゃいちゃする腹立たしい女たちを引き込んできて、やっとのことで念願が叶った』






汀と灯はちらりと目を合わせた。






(…………やっぱり青瑞の姫が、ここに来た人をみんな泉の中に引き込んでいたのね………)




(そうらしいな…………)




(その人たち、どうなっちゃったのかしら………)




(………それは、知らない方が幸せというものだろう)




(………大変なところに来ちゃったわねぇ………)




(他人事みたいに言うな、お前の好奇心のせいで俺まで巻き込まれたんだぞ)




(んま)




(少しは反省しろ、阿呆が)




(…………はぁい)





『…………なにをこそこそしている。



その男は私のものだと言っているのに………本当にまぁ、目障りな女だな!』





再び怒り出した青瑞の姫の髪がざわりと蠢いた。