*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫

「えぇっ!?」






青瑞の姫の言葉に、汀が素っ頓狂な声を上げた。






「それってつまり、この人の見た目が好みだから、あなたの思い人だってことにしただけなんじゃ………」






『なんだと、失礼なことを言うな!!』






「だって、そう聞こえたんだもの!」






『………正直、あまりに待ちすぎたせいか、あの人の顔を忘れかけている。


しかし、愛しい人の顔なのだから、見た瞬間に分かるはずだ!!』






「そんな都合のいい………」






『そして私は、この男の顔を見た途端に、胸が高鳴るのを感じたのだ!


この男が、あの人に違いない!!』






「………………」






「………………」







青瑞の姫のあまりに勝手な言い分に、汀も灯も言葉が出ない。





つまり青瑞の姫は、どうやら灯に一目惚れをしてしまったらしいのだ。




そして、気に入ったから泉に引き込もう、という自分勝手な考えで、こういう行動に出たのである。






(なんてはた迷惑な………)