*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫

汀がわたわたしながら主張すると、青瑞の姫はぎろりと視線を険しくした。







『…………話の通じん奴だな。


今の話を聞いていただろう?



その男こそ、私の思い人。


ただ待ち続けていた私の愛に応えて、戻ってきてくれたのだ。



…………のう、そうだろう?』







「いや、だから違うと何度………っ」






青瑞の姫が嬉しそうに見つめてくるので、灯は頬をひくつかせながら即刻否定した。




しかし青瑞の姫は聞く耳も持たずにうっとりと灯の頬を撫でる。






『そう恥ずかしいがらずとも良い。


私にはもう分かっているのだから。



………私は気がついたらここに住まうようになっていたのだが、若い男が訪れる度に泉の中に引き込んでは、あの人ではないかと確かめていた。



それでも、来る男来る男みな、あの人とは似ても似つかない不恰好な男ばかりだった。



その度に失望していたがーーーやっと、そなたがやって来たのだ。


その美しい容姿………あの人に違いない。



私には分かっている』