*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫

汀は瞬きをするのも忘れて、青瑞の姫の言葉に耳を傾けていた。






(…………あぁ、なんて)






そっと、目を閉じる。




瞼の裏に、青く澄みきった透明な泉の前で眠るように横たわる、一人の若い女の姿が浮かんだ。






(なんてーーーーーきれいな)






透けるような肌が、水面で跳ね返った月光を受けて、青白く輝く。






艶めく長い黒髪が、半ば泉の中に沈んでゆらゆらと広がる。






息がとまりそうなほど、美しい光景だ。







それなのに。







(…………なんてきれいな、そして、悲しいーーーーー)








…………それでも彼女の待ち人は、いつまで経っても来ないのだ。