*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫

灯に抱えられて栗野の背に跨った汀は、視点の高くなった景色に目を瞠る。





「まぁっ、すごい! すごいわ!」





うきうきとした声音で言う汀に、灯は不安を覚えた。




隣に立つ藤波も、似たような表情をして呟く。






「………なんか、嫌な予感がするなぁ」




「…………分かる」






灯と藤波の会話など耳に届いていない汀は、笑顔で楪葉を見下ろす。





「ねぇっ、楪葉ちゃん!


歩かせてみてよ、お願い!!」





「えぇっ、大丈夫かなぁ………けっこうお尻いたいよ?」





「大丈夫大丈夫、私のお尻、たっぷりお肉がついてるから! ほらほら!」





自慢気に尻を浮かせて、裾をめくって見せようとするので、灯と藤波は思わず目を逸らす。





楪葉はしかたないなぁと笑いながら、栗野の手綱を引いてゆっくり歩きはじめた。






栗野が歩くと、背中から振動が伝わってきて、汀の身体は跳ねるように揺れる。





そんな感覚も新鮮に感じて、汀はきゃははと笑った。