*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫

灯は汀を抱いていた腕を素早く離し、両手で汀の肘あたりを掴んで泉から引き出そうとする。





しかし、灯の常人ならざる力をもってしても、汀の腕を全く動かせなかった。





「…………っ、くそ!!」





「いったいなんなの!?」





しばらく水の中に浸かっていた汀の腕は、冴えた水に冷え切り、感覚がなくなってくる。





その腕に、今度は蠢く髪が纏わりつきはじめた。





髪はどんどんと増えていき、次第に汀の肌の色を隠すほどになった。





そして、青白い手と髪が汀の腕を徐々に引き込んでいく。




汀の膝も水に浸かりはじめた。





『………ふふふふ…………』






背筋も凍りつきそうな笑い声が、水底から這い上がってくる。





「………あのっ、ちょ、ちょっと!


どなたが存じませんが、痛いし冷たいから、やめてくれませんか!?」






汀はとりあえず丁重にお願い申し上げてみることにした。






「私、水の中に入ったら息ができなくなっちゃうので、困るんですっ!」