*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫

「まぁ、四半刻以内という約束だし、馬場の中を軽く歩くだけにしておく。


それに俺が見張っておくから、勝手なことはさせない。



どっちの馬でもいい。


こいつが満足するまでの間、少しだけでいいから、乗らせてやってくれないか」






汀の頭を小突きながら、いつになく言葉多く語る灯を見て、楪葉は可笑しくなってしまう。





「分かった。


じゃあ、あたしの馬ーーー栗野を貸してあげる。


藤波の芦尾に比べたら気性は穏やかだし、小柄だから」





「あぁ………助かるよ、ありがとう楪葉」





ほっとしたように灯が言った。




はらはらしながら事の成り行きを見守っていた汀は、にっこりと笑って楪葉の手を握った。






「ありがとう、楪葉ちゃん!!


心配しないでね、私、運動神経はいいほうなのよ!!


安心して栗野を任せてちょうだい!」






自信に満ちた表情で自分の胸をたたいた汀を、灯がまたもや小突く。






「こら、調子に乗るな!


お前は調子に乗るとろくなことしないんだから、自覚してくれ!」





「はぁい」






頭を押さえながら汀はくすくすと笑った。