そんな灯を、汀はくすくすと嬉しそうに笑いながら、頬に手を当てて見上げる。





「………ね、蘇芳丸」




「……………」






灯はやはり答えない。




それでも汀はお構いなしに、言葉を続ける。






「蘇芳丸。ありがとね」




「…………は?」






唐突に礼を言われて、灯は珍妙なものでも見るような顔をした。






「………だって、私のこと、都まで探しに来てくれたんでしょう?」





「…………それは」






灯は目を伏せて、汀から顔を背けた。






「………別に、お前のためじゃない。


お前みたいな人騒がせな奴を野に放っていたら、都の民たちが迷惑するだろうと思って、一刻も早く連れ帰ろうとしただけだ」






「………ふふ。


理由はなんだっていいわ。



………私、あなたに会えて、すっごく嬉しかったんだもの」






照れも屈託もない、素直な言葉だった。