「私の味覚は正常よ!


だって、おいしいものはおいしい、そうでもないものはそうでもない、ってはっきり分かるもの!」






「……お前の思う『おいしい』は、普通の人間の『おいしい』とは大幅に違うんだ!


そういうのを、味覚がおかしいと言うんだっ!!」






不服そうにしている汀に有無を言わせないよう、灯はぐいぐいと手を引っ張っていった。






当てもなく村の中を歩き回っていると、馬場に行き当たった。






(………あ、これは、やばい)






灯は咄嗟にそう考え、慌てて引き返そうとしたが。





時すでに遅し、汀はきらきらと目を輝かせながら、馬を見つめている。






(…………抜かった………)






灯は嫌そうな顔で汀を見下ろした。