*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫

次に入ってきたのは、若い男である。




青瑞の姫の美しさを噂に聞き、その顔を見るためだけに占い処を訪れる男も少なくなかった。





汀は(占い師らしく、占い師らしく)と自分に言い聞かせつつ、水晶玉に視線を集中させる。






「いらっしゃいませ、お客さま。


今日はどのようなことを占いましょうか」






俯いたまま言うと、男が小さく舌打ちをした。



汀は不思議に思ったが、水晶玉から目を上げなかった。






「お客さま、恋のお悩みですか?


それとも、仕事のお悩みですか?」






汀が静かに訊ねると、男は小さく溜め息を吐き出した。






「…………人を、探している」






低く呟かれた声に、汀は頷いた。






「まぁ、探し人なのね。大変ね。


分かりました、占ってみるわね。



その人は、どういう人なの?」






汀は水晶玉を撫で回すようにしながら、念を送るふりをしてみせた。




男が小さく答える。





「…………とんでもない阿呆だ」