蝋燭の火が数本揺らめく薄暗い中に、見たこともないほど横にも縦にも大きな男が座っていた。






「んまぁ、あなた、大きいのねえ!」






素直に感動の声を洩らした汀を、大男が訝し気に見た。






「…………お頭。


なんですか、その変なのは。


今度はまたずいぶん奇天烈なのを連れて来ましたね」






息吹は「成り行きでな」と答えた。






「まー、なんて太い腕!!


切り株のようだわ!!


ほら、見てみなさいな、藤波ちゃん!!」






隣に座り込んで、目をまんまるにして好き勝手に腕やら胸やらに触れてくる汀を、大男は気味悪そうに見下ろす。






「………お、お頭。


なんなんですか、この子どもは………」






汀の振る舞いに辟易している大男の姿に苦笑しながら、息吹は腰をおろして答えた。






「気にするな、天城(アマギ)。


その娘は頭が弱いらしい。



何を血迷ったか、赤毛の鬘を被って、男装をして、自分は青羽山の盗賊で賞金首だなどと吹聴していたから、迷惑なので連れて来たんだ」






「はぁ…………」






大男ーーー天城は、困ったような顔で汀を見下ろしていた。