その日から、数日がたったある日の午後歩は米村と電話で会話をしていた。

歩(もしもし、米村さん?良さそうな物件があったんだけど…今度資料お持ちするんで見てもらえますか?)

そんなふうに話をすすめていた。

米村(そうか。じゃあ今度見に行って決めようか。それより、お前ご飯とかちゃんと食ってんのか?最近がりがりだぞ?大丈夫か?)

歩(え?そんなことないですけど・・・)

そういい、ショーウインドーに映る自分の姿をみつめた。
少し顔がやつれていた。ここ数日、杉浦のあの衝撃的な行動をみてからあまりご飯がのどに通らなくなっていた。
歩は思った。・・・元気なふりをしていても、そんなにうまくあしらえるほど人間は簡単じゃないんだと。でも、私は私。いいのこれで。そうすれば何もかもうまくいくのよ。そう歩は自分に確信をする。

それから数日が経ち、米村と歩はテナントを、見に来ていた。

米村(ここのテナントなかなかいいじゃないか!立地も何もかも素敵だな!)

歩(ほんとですね!楽しみ!)

そんな気持ちで歩はわくわくしていた。
その時、歩のケータイがポケットでなっている。

ブルル・・・

ブルル・・

少しポケットからケータイをとりだすと杉浦からの着信だった。

米村(どうしたの?)

米村の声にはっと歩は我に返る。

歩(いえ・・・お客さんの電話だったんで)

米村(出ていいよ。仕事だろ?)

歩(いえ。いいんです。後でかけなおすから・・・)

米村の隣で歩はまた嘘をついていた。
2人が話を進めるときもずっと歩は上の空でいた。

杉浦のことは嫌いではない。だけど、いつも杉浦の言葉は嘘・・・あんなちっぽけな出来事なんて気にしなければいい・・・と歩は自分に言い聞かせた。
しかし、どうしてこんなにも気になってしまう自分がいるのだろうか。忘れたいのにあの光景が頭にやきついてはなれずにいた。